【エクストラバトルの日】使用禁止カード解説

エクストラレギュレーションとは?

エクストラレギュレーションとは、「スカーレット&バイオレット」シリーズの他に、「ソード&シールド」サン&ムーン」「XY」「BW」シリーズのカードも入れて対戦するレギュレーションのことです。

使用禁止カード

ポケモンカードにおける禁止カードが、どのような基準で判断されているのかを確認しておく必要があります。
現在は削除されていますが、過去にポケモンカード公式サイトに掲載されていた一文を参考にしました。

ポケモンカードゲームにおいて、デッキ構築やプレイングによって対戦相手の行動を制限し勝利を目指すことは、戦術の一つとして認められています。これらのカードは他の一部のカードと組み合わせることで対戦相手の行動を極端に制限し、多様なデッキ構築やプレイングの幅を著しく狭める恐れがあるため、スタンダードレギュレーションにおいて使用できないカードに指定します。

ポケモンカード公式サイト(現在は削除済み、一部改変)

この一文は、当時スタンダードレギュレーションにおいて、特定の2枚のカードが禁止カードに指定された際に公式サイトに掲載されたものです。

この文の後段には、判断基準が明記されています。

他の一部のカードと組み合わせることで対戦相手の行動を極端に制限し、多様なデッキ構築やプレイングの幅を著しく狭める恐れがある

上記の基準に抵触するものは、ポケモンカードにおいて使用を禁止するとされたものです。
要するに、『強すぎる効果は禁止とする例外を設けます』ということです。

この判断基準は、エクストラレギュレーション、そして今後のカード設計や開発方針にも影響を及ぼしていると考えられます。

禁止カードの「どの部分」がこの基準、すなわち「対戦相手の行動を極端に制限する」に該当しているのか。その使い方や設計意図を考え、なぜこのカードは禁止に至ったのかを想像しながら読むと面白いかもしれません。

アップリュー

自分の番に1回使える。相手のポケモン1匹に、ダメカンを2個のせる。その後、このポケモンと、ついているすべてのカードを、自分の山札にもどして切る。

2025年8月1日(金)禁止カードとして指定。同日発売されたメガブレイブ/メガシンフォニア収録の《活力の森》との組み合わせで生まれる無限ループを防ぐための措置である。

  1. アップリューの特性【アップルドロップ】を使う。
  2. アップリューは山札に戻る。
  3. ポリゴンZの特性【クレイジーコード】でワタッコドローエネルギーリッチエネルギーをつける。
  4. アップリューラインを山札から引き切る。
  5. ワタッコの特性【かぜまかせ】でワタッコとドローエネルギーを手札に戻す。
  6. 「活力の森」で手札のアップリューとワタッコを進化させる。

このコンボを《活力の森》で使い回すことでアップリューは文字通り、無限に【アップルドロップ】を使うことができるため、禁止カードに指定された。

ヨマワル

自分の番に1回使える。自分の手札を3枚トラッシュする。その後、このポケモンから進化するカードを、自分の山札から1枚選び、このポケモンにのせて進化させる。そして山札を切る。

2024年9月2日(月)禁止カードとして指定。ヨマワルは先攻1ターン目に相手の場のポケモンをすべてきぜつさせて勝利を目指すワンショットコンボを成立させた。禁止経緯となったコンボの一連の流れは下記のようになる。

  1. 特性【ひとだましんか】でサマヨールに進化する。
  2. サマヨールに「いのちのしずく」をつける
  3. 特性【カースドボム】を宣言。「いのちのしずく」の効果で相手はサイドを取れない。
  4. 「スイレンのつりざお」で「いのちのしずく」を山札に戻す。
  5. 1~4を繰り返す。

この手順を先攻1ターン目に行う。エクストラレギュレーションにはグッズで山札を引くカードやポケモンを山札に戻すカードが存在しており、それらをうまく組み合わせることで先攻1ターン目から特性【カースドボム】を6~8回使用することを可能とした。そして、この【カースドボム】で相手の場のポケモンをすべてきぜつさせるワンショットコンボを成立させている、諸悪の根源がヨマワルであった。

ヨマワルは収録初日のエクストラ大会から大惨事を引き起こした。上記のコンボは成功率80%以上と非常に高く、多くのプレイヤーが後攻まで番が回ることなく、辛酸を舐める結果となった。

ヨマワルが禁止になるまでには、リリースから約二ヶ月半を要した。しかし、SNS上では「もっと早く禁止にすべきだった」との声が多数挙がっており、それはごもっともな意見だと、多くのプレイヤーが同感している。

回収ネット

自分のポケモン(「ポケモンV・GX」をのぞく)を1匹選び、手札にもどす。(ポケモン以外のカードは、すべてトラッシュする。)

幾年ぶりかに、2023年、新たにエクストラに禁止カードが追加された。
「回収ネット」の主な禁止理由は、カード効果の除外対象をV・GXに限定していた点にある。これが良くなかった。

時代が進み、ex環境、そして次世代ルールを持つポケモン環境へと移行すると、V・GXのみを除外するという文言が適切ではない。
今後収録されるカードや、対戦に要する時間・バランスを総合的に鑑み、回収ネットは禁止カードと判断された。

つまり、ポケモンexや次世代ポケモン〇〇には使えてしまうため、実質的にグッズでの「フトゥー博士のシナリオ」である。

(では、どのように書けば適切であったかというと、「ルールを持つポケモン」を除外対象とするのが妥当であった。V・GXのみを限定とするテキストは、レギュレーションの変遷に対応していない。)

ただし、このカードが仮に「ルールを持つポケモンを除く」としてリリースされていたとしても、禁止を免れ得たかというと疑わしい。それほどまでに強力な1枚であった。

アーケオス(BW2)

このポケモンがいるかぎり、おたがいのプレイヤーは、手札からポケモンを出して進化させられない。

後述の【マツブサの隠し玉】との組み合わせにより、1ターン目からアーケオスを場に出すことが可能となった。このコンボによって、進化デッキの生存権は軒並み否定されることになる。

禁止カード判断基準「相手の行動を極端に制限する」に該当するものとして禁止カードに指定された。

フラダリの奥の手

おたがいプレイヤーは、それぞれ、自分のトラッシュにあるすべてのカード(「フラダリの奥の手」をのぞく」)を山札にもどす。そして山札を切る。

対戦開始直後、1ターン目から大量のグッズを使用 → 「フラダリの奥の手」でグッズを山札に戻す → 再び大量のグッズを使用 → ワザを宣言してバトル場のポケモンを気絶させる。
相手に番が回ったころには、すでに20分以上が経過しており、そのまま時間切れ。サイド差によって勝利する。

この戦術は決して遅延行為ではなく、膨大な物量を用いて合法的に時間を消費し、意図的に時間切れ勝利を狙う戦略。対戦相手は、対戦開始から終了まで、ただ膝の上に手を置き、相手の挙動を見守るほかなかった。

この使われ方は開発陣の想定外であり、まさに「フラダリの奥の手」の欠陥と言わざるを得なかった。そして、この戦術を軸にしたデッキが直近のチャンピオンズリーグ2015で準優勝を果たす。
「他の一部のカードと組み合わせることで対戦相手の行動を極端に制限」を幇助していると判断され、リリースからわずか半年で禁止カードに指定された。

このカードが禁止になるまでのチャンピオンズリーグは、まあ酷かった。
暗黙の了解として「このデッキだけは使わない」という見えざる紳士協定が存在していたかのようだった。

巨大植物の森

おたがいの草ポケモンは、最初の自分の番や出したばかりの番でも進化できる。

コノハナは草タイプのため、スタジアム【巨大植物の森】を出せば、1ターン目から悪タイプのダーテングへ進化できる。特性【きょだいなうちわ】を使用し、相手の場のポケモンを0体にして特殊勝利を狙うデッキが誕生した。

この勝利方法は、本来ポケモンカードが想定している勝利条件にそぐわないと判断され、禁止カードに指定された。

マツブサの隠し玉

このカードは、自分の手札がこのカード1枚のときにしか使えない。自分のトラッシュから闘ポケモンを1枚選び、ベンチに出す。その後、自分の山札を5枚引く。

アーケオスとの巻き添えで禁止カードとなる。

アーケオスの他にも、化石から進化する闘ポケモンたちには、ギリギリ悪さできそうな、できなさそうな絶妙な妨害効果を持ったカードが揃っているため、念のための措置と思われる。

アンノーン【DAMEGE】(SM8)

このポケモンがバトル場にいるなら、自分の番に1回使える。自分のベンチのポケモン全員にのっているダメカンの数が66個以上なら、この対戦は自分の勝ちになる。

以下のカードのコンボでループすることで、特性【DAMEGE】の条件を1ターンで満たすことができる。(画像はクリックで拡大可能)

  1. マグマ団の秘密基地が出ている状態でクレッフィをベンチに出す。クレッフィにダメカンが2個乗る。
  2. ランクルの特性【ダメージスワップ】でダメカンを他のポケモンに移動させる。
  3. クレッフィの特性【ワンダーロック】でクレッフィをポケモンのどうぐにする。
  4. マニューラの特性【ひっぺがす】でポケモンのどうぐとなったクレッフィを手札に戻す。

この繰り返しによって【DAMAGE】の条件を満たす。
当初は要求値が高すぎてロマンコンボと見られていたが、ゲンガー&ミミッキュGXのワザ【ホラーハウスGX】を経由して、2ターンかけて盤面を整えるプレイの安定性が高まり、使用者が増加。
しばらく環境で猛威を振るったのち、【アンノーン】は禁止カードに指定された。

アンノーン【HAND】(SM8)

このポケモンがバトル場にいるなら、自分の番に1回使える。自分の手札の枚数が35枚以上なら、この対戦は自分の勝ちになる。

なぜか禁止カードに指定された。今後リリースされるカードとの兼ね合いを考慮して、念のための措置と思われる。

しかし、面白い効果なのでもう少し検討しても良かったと思われる。(そもそも本気で勝ちに行くならHANDで勝ちに行く必要がない。HANDを成功させるよりもっといい方法が必ずある。HANDが勝利への最短ルートを歩んでいるとは到底考えにくい)。

手札に35枚、サイドに6枚、バトル場にアンノーン1枚。この時点で、合計42枚のカードの行方は確定している。
つまり、プレイヤーは残る18枚のカードで山札をすべて引ききらなければならない。相手の『ファントムダイブ』や『トライフロスト』で負けないようにケアしながらである。
そう考えると【HAND】を成功させる難易度の高さがわかりやすいだろうか。

こわいおねえさん

場に出ているスタジアムをトラッシュする。その後、相手は相手自身の手札を3枚選び、トラッシュする。

ハンデス系デッキに対する制限。

特定のカードとの組み合わせによって、容易に相手の手札を0枚にすることが可能であったため、禁止カードに指定された。

ムサシとコジロウ

おたがいのプレイヤーは、それぞれ自分の手札を2枚トラッシュする。

ハンデス系デッキに対する制限。

特定のカードとの組み合わせによって、容易に相手の手札を0枚にすることが可能であったため、禁止カードに指定された。

リセットスタンプ

相手は相手自身の手札をすべて山札にもどして切る。その後、相手は相手自身のサイドの残り枚数分、山札を引く。

ハンデス系デッキに対する制限。

特定のカードとの組み合わせによって、容易に相手の手札を0枚にすることが可能であったため、禁止カードに指定された。

マーシャドー(SM3+)、レッドカード

自分の番に、このカードを手札からベンチの出したとき、1回使える。お互いのプレイヤーは、それぞれ手札をすべて山札に戻して切る。その後、それぞれ山札を4枚引く。

相手は相手自身の手札をすべて山札にもどし、山札を切る。その後、相手は山札を4枚引く。

先攻プレイヤーが1ターン目にこのカードを使用すると、後攻プレイヤーはいきなり手札を制限された状態でゲームを開始することになる。
じゃんけんの結果にすぎないにもかかわらず、先攻と後攻の差が著しく大きくなってしまうため、禁止カードに指定された。

フラベベ(SM6)

このポケモンは、後攻プレイヤーの最初の番なら出したばかりでも進化できる。

ハンデス系デッキに対する制限。進化後のフラエッテが何か悪さをしそうなポケモンだったため禁止カードに指定された。

ムウマージ(SM10)、ザクザクピッケル、しまめぐりのあかし、マチスの作戦

自分の番に1回使えて、使ったならこのポケモンをきぜつさせる。自分の手札が7枚になるように山札を引く。

相手の山札の上から3枚見て、その中から好きなカードを1枚選ぶ。残りのカードを山札に戻して切り、選んだカードを山札の上に戻す。

このカードをつけている「ポケモンGX、EX」の最大HPは「100」小さくなり、そのポケモンが相手のワザのダメージできぜつしたとき、取られるサイドは1枚少なくなる。

このカードは、自分のサイドの残り枚数が、相手より多いときにしか使えない。この番、自分が使えるサポートの枚数は3枚になる。(このカードをふくむ。)

チャンピオンズリーグ2020のエクストラ部門にてこれら4枚のカードを主要としたハンデスデッキが優勝。この頃からハンデスに対する規制が厳しくなる。これらのカードを組み合わせたデッキは以下の通りに動く。(画像はクリックで拡大可能)

  1. ジラーチEXに【しまめぐりのあかし】を付けて気絶させる。
  2. ムウマージの特性【ふしぎなことづけ】を使用して気絶させる。
  3. 1と2を組み合わせて相手の残りサイドが1枚となった時、【マチスの作戦】→【N】→【マーズ】の順でサポートを使用。相手の手札は0枚となる。
  4. 【ザクザクピッケル】を使用して相手の山札の一番上を操作する。

ザクザクピッケル使用後の相手が行動できないターンの間に、サイドを6枚取るor相手のベンチ切れを目指すというもの。

禁止カード判断基準他の一部のカードと組み合わせることで相手の行動を極端に制限する」に該当するものとして禁止カードに指定された。

ゲーチス

相手の手札を見て、その中の「グッズ」をすべて相手の山札に戻して山札を切る。その後、戻したカードの枚数分、このカードの持ち主は山札を引く。

ハンデス系デッキに対する制限。効果が強すぎると判断されたため禁止カードに指定された。

ヤレユータン(SM5S)

自分のトラッシュにある好きなカードを3枚、相手に見せてから好きな順番に入れ替えて、山札の下に戻す。

コントロールデッキ系に対する制限。効果が強すぎると判断されたため禁止カードに指定された。

時のパズル

「時のパズル」は同時に2枚まで使え、使った枚数によって効果が変わる。
・1枚使ったなら、自分の山札の上から3枚見て、好きな順番に入れ替えて、山札の上に戻す。
・2枚使ったなら、自分のトラッシュから好きなカードを2枚選び、相手に見せてから手札に加える。(この効果は2枚で1回はたらく。)

禁止カード判断基準「他の一部のカードと組み合わせることで対戦相手の行動を極端に制限」を幇助していると判断されたため禁止カードに指定された。

オカルトマニア

次の相手の番の終わりまで、お互いの場・手札・トラッシュのカードに書かれている特性は、すべてなくなる。(新しく場に出したカードも含む。)

負けている側よりも勝っている側が使うオカルトマニアが圧倒的に強く、カードゲームの醍醐味である逆転を許さない効果。

特性ロックを行うカードとして人気の高い【サイレントラボ】や、ダストダスの特性【ダストオキシン】は、【フィールドブロアー】によって解除することができる。しかし【オカルトマニア】は、一度使われてしまえば解除の余地がない。この性質が、禁止カード判断基準の一つである「相手の行動を極端に制限する」に該当するとして、禁止カードに指定された。

シェイミEX(XY6)

この特性は、このカードを手札からベンチに出したとき、1回使える。自分の手札が6枚になるように山札を引く。

このカードのテキストに調整が加えられたものが、クロバットVの特性【ナイトアセット】である。特性【ナイトアセット】のテキストには、この番、すでに別の「ナイトアセット」を使っていたなら、この特性は使えない。という一文が追加されている。

一方、シェイミEXの特性【セットアップ】にはこの制限がなく、1ターンに何度でも使用することができた。やろうと思えばシェイミ×4で最大24枚ドローである。

1ターンあたりの処理時間が極端に長くなることが懸念され、後に調整版として【ナイトアセット】を持つクロバットVが登場。結果として、シェイミEXは禁止カードに指定された。

ミロカロス(BW2)

この特性は自分の番に1回使えて、使ったならこのポケモンをきぜつさせる。自分のトラッシュから基本エネルギーを3枚選び、自分のポケモン(「ポケモンEX」をのぞく)1匹に付ける。

自分のポケモン(「ポケモンEXをのぞくと書いてあるため、ポケモンVやポケモンGX、ポケモンexには対応しているのが禁止のポイント。理屈としては「回収ネット」の禁止理由と同じである。

禁止カード判断基準「他の一部のカードと組み合わせることで対戦相手の行動を極端に制限」を未然に防ぐため禁止カードに指定される。

ヤミラミ(BW4)

自分のトラッシュから「グッズ」を2枚選び、相手に見せてから、手札に加える。

コントロールデッキ系に対する制限。効果が強すぎたと判断されたため禁止カードに指定される。

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