
良い点
・特性【とりひき】が強力で、高い要求も超えやすい
Nのゾロアークexの特性【とりひき】によって、毎ターン・サポートを使わずとも手札を増やすことができる。これにより決めたプランの再現性が高く、複数のカードを用いたコンボで戦える。
・構築が定まっておらず、動きの予測が困難
マキシマムベルト、からておうの稽古、ヒーローマント、フトゥー博士のシナリオなど、相手の計算を狂わせるカードが盛りだくさん。これらのカードはすべて、勝利ターンの短縮または敗北ターンの延長という時間的価値に寄与している。
基本的にポケモンカードは、『2パンをワンパンに変更する』、『倒せると思っていたポケモンを回復する』など、本来2ターンかかる行動を1ターンに凝縮した行動を1度でも起こすことができれば、多くの場合それは逆転に繋がる。ゾロアークデッキはそういった時間軸に貢献したカードを多く採用できる。
現状、ゾロアークは何が採用されていてもおかしくないビックリデッキ。傾向はあるものの、対戦相手はあくまで知見の範囲内しか守れない。
・環境デッキに対して弱点を突きやすい
主なアタッカーがNのゾロアークexとNのヒヒダルマで、悪・炎の組み合わせによりサーナイトとサーフゴーの弱点を突ける。特に環境トップのサーフゴーに対して、非ルールポケモンのヒヒダルマで弱点を突けることは120点。最高の評価ポイントに値する。
悪い点
・盤面を作れていないと要求を満たしづらい
デッキ全体がNのゾロアークexの特性【とりひき】に依存している。
山札の圧縮にはかなりの回数の【とりひき】が求めら、ゲーム中に最低でも10回前後の【とりひき】を宣言をしなければ、複数のカードを組み合わせたコンボは実現できない。
盤面には多くのカードを提出する必要があり、強い動きをするための要求値は2進化デッキと遜色ない。
・高いダメージを出す要求が高い
Nのゼクロムで素点250を出せるようにはなったものの、2進化exが多い現環境ではダメージ不足は否めない。2進化exをワンパンするには、からておうの稽古+くさりもち、アドレナブレインなど、2パーツ以上が必要となる。理論上は可能だが、2進化ex主体のデッキはナンジャモ採用率が高く、要求札を必要なタイミングで揃える難度は相当に高い。
山を作り切った後半であれば、2進化ワンパンムーブの再現性はようやく出てくる。そのため、序盤〜中盤からこの動きをアテにしてゾロアークを使うのであれば、ハッキリ言って辞めておいたほうがいい。
各対面解説
サーフゴーex
Nのヒヒダルマを挟むことで、サイドレースを有利に進められる。サーフゴー側はNのゾロアークexをサーフゴーexでしか倒せないため、その返しに『バックドラフト』でカウンターをする。
どのプランで行くか迷った場合でも、基本的にはヒヒダルマにエネルギーを集めて攻撃し続けるだけで、サーフゴー側は立ち回りが難しくなる。ヒヒダルマに意識が向けられている間に、加点した『ランページサンダー』で直接倒し切るルートを取るのもよい。
序盤で大きく躓かない限り、ゾロアークの手中には煌めく無数の選択肢がある。
リザードンex
2025年当初も苦しかったが、依然苦しい。リザードのHP110で序盤の『ひだるまキャノン』が通らない上、サイドを1枚でも取ると『カースドボム』からマキシマムベルト付きリザードンexがゲームを動かしてくる。
リザードン側の初動を潰して一方的にボコボコにする以外の解決方法なし。
ドラパルトex
グッズロック下でどれだけ盤面を作れるかの勝負となる。
盤面さえ完成してしまえば、Nのゾロアークexで中打点を受けつつ、Nのレシラムの『パワーレイジ』でカウンターしたり、火力アップを重ねてワンパンを狙ったりと選択肢が多い。
ゾロアーク側がきちんと回れば「これ以上ドラパルトに強いデッキはない」と思わせてくれるほどのパワーを感じる。しかし、ゾロアーク側にグッズロックが刺さると当分動くことは叶わず、しかも結構な割合で刺さる。
序盤に『ひだるまキャノン』で速攻してサイドを進めても、その後のナンジャモで動きを止められる展開が多い。1度でも止まってしまうと『ひだるまキャノン』で作ったアドバンテージもなくなってしまう。
個人的には無理にサイド先行を狙うよりも、ドラパルト側が攻めにくい盤面を作り、受けを重視して戦う方が勝率は安定しやすいのではないか?と考えている。
サーナイトex
基本的にはサーナイトラインに対して集中砲火。
サーナイト側に、勇気のおまもり付きメガディアンシーex+悪エネルギー付きマシマシラ+サーナイトexが揃ってしまうと、盤面の強さの綱引きで負けている。この理想盤面にサーナイト側が到達する前に、ゾロアーク側がどれだけ荒らせるかの勝負となる。
2025年当初はゾロアーク有利とされていたが、キルリアのHPが90から100へ上昇したことで、『ひだるまキャノン』による速攻の刺さりが弱くなり、かつてのような展開には持ち込みづらい。一筋縄ではいかないマッチアップに変化している。
まだ考察が甘いが、今のところは互角…?かな、くらいのイメージ。
ゾロアーク側はメガディアンシーexを無視して毎ターン「ボスの指令」連打できるのか?
サーナイト側はゾロアークの攻撃を受けきって盤面を作れるのか?という、どちらも理想ムーブの一歩手前で空中線を繰り広げている。
サーナイト側が中途半端にメガディアンシーexで攻撃すると、『パワーエイジ』で返される。サーナイト側が攻撃に移行するには完璧な盤面が求められるため、サーナイト側の方が盤面作りのハードルがやや高いか?という印象。
タケルライコex
2025年当初はよく見られたマッチアップ。
結局はタケルライコ側に軍配が上がったことで、ゾロアークは現在に至るまで環境から姿を潜める形となった。では、ゼクロムの介入によって相性はどのように変化したのだろうか?
以前までは、高い要求を満たせない限りゾロアーク側が負けるマッチだった。だが、Nのゼクロムの登場により、タケルライコexや草オーガポンexをワンパン可能となり、2-2-2のガチンコ勝負にも対応できるようになっている。加えて、ヒヒダルマの『ひだるまキャノン』でホーホーを2体取り、『バックドラフト』で草オーガポンをきぜつさせる選択肢も健在。
2025年当初はゾロアーク側が不利なマッチだったが、リーリエの決心による手厚いドロー補助や、トウコからピンポイントでヒヒダルマを動かすギミックなど、多くのサポートカードの補助を受けた結果、総合的な進化はゾロアーク側にやや軍配が上がったかという印象がある。
スピードゲームにはなるものの、リーリエの決心による初動担保が厚いため、単純なバトル場の取り合いであれば十分に付いていける。
マリィのオーロンゲex
ダメカンばら撒きからの『デヴォリューション』が厳しく、不利なマッチアップとなる。
ゾロアーク側のアタッカーはすべて特性持ちであり、ダメカンの蓄積を防ぎにくい。進化デッキの典型・宿命とも言える負け方をする。
さらにオーロンゲ側にはシェイミの採用率が高く、『ひだるまキャノン』で盤面を荒らしにくい点も逆風。『パワーエイジ』でオーロンゲを1体はワンパンできるものの、2体目まで手が届かず攻め手が続かない。
フトゥー博士のシナリオで『デヴォリューション』のラインをずらし、モモワロウexにも手貼りしてとにかくアタッカーが途切れないような立ち回りを意識。
ソウブレイズex
ヒヒダルマの『バックドラフト』はソウブレイズデッキとの相性が最高に良い。
ゾロアークexを差し出し、ソウブレイズexにワンパンさせる→ヒヒダルマの『バックドラフト』でカウンターの流れ。
メガアブソルex
闘オーガポンに対してはくさりもちを付けてゼクロムの『ひきさく』をすれば、一応2パンで倒すことはできる。
しかしアブソル側は「勇気のおまもり」+「アドレナブレイン」+「ボタン」で対抗してくる。果たしてこれでイーブンと言えるだろうか?
現状、界隈に出回っている多くのデッキには闘オーガポンの突破方法がない。さあどうする
まとめ
基本的には、ヒヒダルマ→なにか→ゼクロムでワンパンというゲームメイクになる。
確かにゼクロムの加入によって、これまで課題だったフィニッシュは鮮やかになった。しかし、そもそもこのデッキはヒヒダルマから入るプランの再現性、そしてその『ひだるまキャノン』の予後に難があったため、使用率が低迷していたのではないか?という、このデッキが頓挫した原点とも言える疑問に今、立ち返っている。
闘オーガポンは突破できず、リザードンマッチは依然として厳しいまま。サーナイトにゼクロムはあまり関与せず、サーフゴーやソウブレイズはもともと有利だった。変化があったとすれば、タケルライコとの相性が改善したことくらいである。そう考えると、シェア率の上昇は一過性のものでは…。と、そんな口に出すのが憚られるような真実に辿り着きそうになる。
これまで記事で扱ってきたデッキは、『シロナのガブリアス』や『おまつりおんど』といった Tier3帯のデッキだったこともあり、ある程度分別を弁えた視点から立ち位置を考察していた。
これらのデッキは、そもそも自身がTier1に到達し得ないことを自覚しており、それでもTier3帯ならではの良さで戦っている点をリスペクトし、その魅力を汲み取って評価してきた。
しかし今回は「ゾロアークは Tier1 になり得るか」という観点で評価しなければならず、以下その内容は辛口。
結論としては、風呂敷だけが広がっており、“無限の可能性”といった耳障りのよい言葉だけが独り歩きしている印象が強い。
特に、「闘オーガポンをどうするか」や「リザードンをどうするか」という核心が残されたままであり、その点を直視されないまま議論が進んでいるため、ゾロアークはかなり甘めにヨイショされているように見える。



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